「オンライン カジノ 違法」はなぜ誤解されるのか――日本の規制と実務から読み解く

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日本の法制度とオンラインカジノの位置づけ

日本では、賭博に関する基本ルールを刑法が定めている。中心となるのが刑法185条(賭博罪)186条(常習賭博・賭博場開張等図利)だ。185条は一時の娯楽であっても金銭その他の財物を賭けた行為を処罰対象とし、原則として50万円以下の罰金等が科される。186条は、常習的に賭博を行った者や賭博の場を設け利益を得た者に対し、懲役刑を含むより重いペナルティを予定している。ここで重要なのは、賭博が「国内か国外か」ではなく、「日本法の適用が及ぶか」「行為の実態が賭博に該当するか」で判断される点である。

よくある誤解として、「海外のライセンス(例:キュラソー、マルタ、フィリピンなど)があるから日本でも合法」という主張がある。だが、属地主義を基本にする日本の刑法は、国内からアクセスし国内で結果が発生するオンライン上の行為にも適用され得る。端的にいえば、日本居住者が国内からオンラインカジノを利用し金銭を賭ければ、刑法上の賭博に該当するリスクは消えない。運営者が国外であっても、国内で賭博行為を助長・媒介する態様が認められれば、幇助賭博場開張等図利に関する評価が問題となる可能性がある。

一方で、日本には特別法に基づく例外も存在する。競馬、競輪、ボートレース、オートレース、宝くじ、スポーツくじ(toto)といった公営競技・公的くじは、個別法で賭博の禁止から除外される。ここから導かれる大原則は明快で、「例外として合法化されたもの以外は、原則として違法扱い」だ。オンラインカジノは日本の特別法の枠外にあるため、現行法上は違法リスクが前提となる。

さらに、オンライン特有の論点として「サーバー所在地」「決済の形態(クレジットカード、電子マネー、暗号資産等)」「ライブ配信型ゲームの運営実態」などが争点化しやすい。たとえば、暗号資産でチップを購入し、オフショアサーバー上のゲームに参加する形態であっても、日本からの参加・資金移動・結果の享受という要素が揃えば、賭博の構成要件充足が検討される。したがって、「技術的に海外で完結しているように見える」仕組みでも、日本国内の法的評価は大きく変わらない。

摘発事例・実務運用から見えるグレーゾーンの実像

過去の摘発動向を見ると、警察は主として運営側(国内で客を集め、端末や場所を用意してオンラインカジノに接続させる、いわゆる「店」や組織的な仲介者)を狙い撃ちにする傾向が強い。これは賭博場開張等図利常習賭博が重く処罰されるためで、継続性・組織性・利潤追求が明確なケースほど立件しやすい。一方、利用者側については、書類送検や任意捜査を経たうえで、最終的に略式罰金や不起訴となる例が報じられることもある。もっとも、これは「利用者は常に安全」という意味ではなく、事案ごとの事情(常習性の有無、賭け金の多寡、関与の態様、供述内容等)で処分の行方が左右される。

実務上の論点として注目されるのが、場所性の評価役割分担だ。サーバーが海外にあっても、顧客の募集、資金の受け渡し、アフィリエイト報酬の支払い、トラブル対応といった実務が国内で行われていれば、国内における実体が認定されやすい。加えて、アフィリエイターや紹介者が、単なる情報提供を超えて参加を具体的に促し決済の方法を指示し、参加後のリベートで利益を得るなど、賭博行為の「実現」を容易にする態様があれば、幇助や共同正犯的評価が検討される余地もある。

「海外ライセンスの表示」「年齢確認」「自己排除の導入」といったコンプライアンス風の措置があっても、日本の特別法による合法化の枠組みに入らない限り、違法性の評価は覆らない。とりわけ、ライブディーラー型のゲームや高額ボーナス、リベートで参加を継続的に誘引する仕組みは、常習性図利性の観点から、実務で厳しく見られやすい部分だ。警察発表や公判記録では、「店」型のネットカジノ施設(パソコンを設置しスタッフが操作支援)や、高額入出金を仲介する中間業者が足掛かりとなり、運営実態の解明・利用者の特定につながる流れが確認できる。

また、不起訴事例があることをもって「合法」と捉えるのは危険だ。不起訴には多様な理由があり、証拠の脆弱性、被疑者の事情、情状、捜査資源の配分など、立証・運用上の判断が介在している。将来の運用も同様になる保証はなく、社会的関心が高まったり、決済スキームが可視化されたりすれば、同種行為でも処理が厳格化することは十分起こり得る。実務の空気感は変化しやすく、「近年は緩い」あるいは「昔より厳しい」といった印象論に依存するのはリスクが高い。

利用者・事業者のリスク、広告・決済のコンプライアンス

オンラインカジノに関わるリスクは、刑事責任にとどまらない。決済の面では、クレジットカード会社の約款で賭博関連の利用禁止が明記されることが多く、チャージバックやアカウント凍結、信用情報への影響が生じ得る。暗号資産やプリペイドを介した送金も、国内の犯罪収益移転防止法や各事業者のAML/CFT(マネロン・テロ資金供与対策)方針によりモニタリング対象となりやすい。疑わしい取引の届出や取引停止は、利用者・仲介者双方にとって金融リスクとなる。

広告・アフィリエイトにも注意が必要だ。単なるレビューを装いながら、実質的に参加を積極的に勧誘し、入金方法の詳細やボーナス取得の手順を具体的に示し、収益の一部を還元する仕組みを設けるなど、参加の実体的な媒介を行えば、刑法上の幇助や図利の評価が問題化しやすい。加えて、景品表示法特定商取引法の観点からも、過度な煽り表現や誤認を与える表示はリスクとなり得る。SNSや動画配信での「勝てる」「必勝法」といった断定的表現は、行政指導やアカウント停止、民事上の責任追及の火種にもなる。

利用者の観点では、消費者保護の空白が問題だ。ライセンスの管轄が海外で、紛争解決や苦情処理が外国語・外国法に委ねられる場合、出金拒否ボーナス条項による没収アカウント閉鎖といったトラブルが生じても、実効的な救済が難しい。国内の公営競技のように、透明な統制・監督、明確なオッズ・控除率、苦情窓口が確立されている仕組みとは異なり、運営の恣意性が残りやすい。さらに、依存借金の深刻化、家族・職場への影響など、社会生活上のダメージも無視できない。

VPNを使えば安全仮想通貨なら追跡されないといった情報は、実務の観点では成立しないと考えた方がいい。ログ・通信記録・資金移動の痕跡は多層的に残り、デバイス指紋KYC/AMLの履歴から接点が特定されることもある。規制が強化されるほど、決済・広告・トラフィックの各入口での封じ込めが進み、関与のコストとリスクは高まる傾向にある。

もし、賭け事のコントロールに不安がある、損失を取り返そうと焦ってしまう、人間関係や仕事に支障が出ていると感じるなら、早めに支援窓口を検討したい。たとえばオンライン カジノ 違法の情報を目にしたことをきっかけに、匿名で相談できる仕組みを活用するのも一手だ。問題の早期発見・早期対応は、法的・経済的・心理的なダメージの拡大を防ぎやすい。

最後に、法改正や行政の運用は変化し続ける。IR整備法に基づく特定複合観光施設区域(IR)の議論が進む中でも、オンライン領域が包括的に解禁・正当化される見通しは立っていない。海外のカジノ規制は、ライセンス、監督、課税、プレイヤー保護、広告規律、自己排除プログラムが精緻に設計されて初めて成立する。日本で同等の枠組みが法的に整備されない限り、オンラインカジノの位置づけは「違法リスクが原則」という現状認識が妥当だ。現行法の枠内で何ができ、何が許されないのかを丁寧に見極めることが、無用なリスク回避の第一歩になる。

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